LGC Biosearch Technologies社 ブログ記事(-製品の最新技術や活用事例のご紹介-)

イメージング Stellaris アッセイ パート I:顕微鏡について理解する

Stellaris®FISHは、in situハイブリダイゼーションによるRNA検出テクノロジーです。このテクノロジーがサポートする素晴らしいアプリケーションは、検出ツールなしでは成り立ちません。このシナリオにおける検出器は、蛍光顕微鏡です。

顕微鏡は、Stellarisのテクノロジーを初めて使用する科学者にとって、非常に大きな壁となります。なぜなら、蛍光顕微鏡は新しいテクノロジーであり、全国のどの研究室にもある普通の機器ではないからです。蛍光顕微鏡は非常に複雑で繊細な、高価な器材であり、主にコアとなる研究室に常備され、光学によって生物学的システムのさらなる調査に用いられます。
とは言え、どの顕微鏡システムもユニークです。つまり、どのシステムもセット販売ではなく、カスタマイズされています。ハードウェアの基本から、あらゆる動作を調整するソフトウェアに至るまで、全てがラボごとに異なります。全システムの組み合わせごとにプロトコルを合理化するのは非現実的です。
したがって、研究室でNikon、Leica、Olympus、Zeiss、またはその他のものを使用しているかどうかに関わらず、このブログ記事は、Stellarisの素晴らしい画像を取得する上で役に立つ、基本的な顕微鏡要件をお伝えすることを目的としています。


プローブのハイブリダイゼーションが完了したら、すぐに Stellaris アッセイを画像化したいと思われることでしょう。しかし、このブログシリーズのパート IIで説明するイメージングの話に入る前に、顕微鏡ハードウェアについて知っておくべき5つの事項を説明します。

1. 蛍光顕微鏡を使用する
現在、共焦点顕微鏡が多く普及されていますが、初めて取り扱う方は、まず広視野蛍光顕微鏡をお試しされることをお勧めします。LGC Biosearch Technologies社(以下、LGC社)では、Nikon Eclipse Ti-E倒立顕微鏡を使用しています。

2. 光源に注意する
水銀ランプやメタルハライドランプなどの強力な光源が必要です。LGC社では、Prior Lumen 200 メタルハライドを使用しています。 LEDは近年で大きく進歩しており、新しい LED ベースの光源で機能するものもあります。LGC社は、
CoolLED の pE-4000 と Lumencor SOLA light engineという 2つのLED光源のデモを行い、どちらのLED光源でも、
RNAの単一分子の検出に成功しました。

3. 冷却CCDカメラを使用し、低照度であることが重要
標準的な冷却 CCD カメラを推奨します。速度よりも低照度イメージングに最適化されています (ピクセル サイズは
13 µm 以下が理想的です)。これは、LGC社ではAndor Claraを使用しています。カメラについて知っておくべき重要な機能は、量子効率 (QE) です (図1)。 QEは、入射光子から測定可能な電子信号を生成するイメージ センサーの有効性の尺度です(※1)。特定の光子信号に対してカメラによって電子に変換される光子の数が多いほど、QE が高く、Stellaris のイメージングに適しています。 QEは波長に依存するため、理解しておくことが重要な機能です。


例として、Andor Claraカメラの仕様書から得られたこのQE 曲線を考えてみましょう。 QEは、可視スペクトルのさらに上に移動するにつれて、600nmを超えると低下し始めます。たとえば、カメラの650nm付近のQEが33%であるとします。これは、3光子が入ってくるごとに1電子が生成されることを意味します。このAndor Claraには、QEを50%近くまで高める拡張NIRモードがあり、Quasar®670色素のイメージングに有利です。お使いのカメラに同様の機能があるかどうかを確認してみるとよいでしょう。重要な点としては、RNAターゲットを長波長の蛍光色素で標識し、カメラのQEが低い場合、蛍光RNA分子のS/N 値が低くなり、識別が困難になる可能性が高いということです。

4. 高解像度の対物レンズを入手する...なぜならRNAは小さい!
1.3 以上の高い開口数 (NA) を備えた 60~100倍の油浸対物レンズが必要です。 Stellarisの画像品質は、NAと解像度によって異なります。分解能は、回折限界の単一分子 RNAスポットなど、標本内の微細な部分を区別する能力です。顕微鏡の開口数は、光を集める能力の尺度です(※2)。開口数の値が高いほど、入射光線が対物レンズのフロントレンズに入射することが可能になり、より解像度の高い画像が得られるため、より小さな構造を鮮明に視覚化できます。

LGC社が使用しているNikon には、CFI Plan Apochromat λ 60x Oil NA 1.4が搭載されています。平面(planar)対物レンズはフラットフィールド補正されています。つまり、視野内に表示される画像は湾曲したものではなく、平らに見えます。顕微鏡のレンズを通過する光の各波長は、異なる角度で屈折または「湾曲」し、共通の焦点が色ごとにわずかに異なるようになります。アポクロマートレンズは、色収差と球面収差が補正されています(※3)。したがって、さまざまな波長の光を標本に照射すると、焦点面はそれぞれの波長でほぼ同じになります。一般に、60~100倍の油浸対物レンズの多くは高いNAとなりますが、念のため再確認するとよいでしょう。

5. 正しいフィルターセットを見つける
目的の RNA を検出できる Stellarisプローブセットを設計したら、顕微鏡下でRNA分子を見つけられるように、ラベルとして機能する色素 (蛍光色素) を選択する必要があります。選択した蛍光色素は、顕微鏡にすでに装備されているフィルタ セットと互換性がある必要があります。互換性を確認する簡単な方法は、使用しているフィルターを提供する会社のWeb サイトを確認することです。別の方法として、使用したい蛍光色素のフィルターセットを購入することもできます。

図 2A に示すQuasar®570色素をご覧ください。この色素を検出できるフィルターは、図2B に見られるような吸収スペクトルと蛍光スペクトルを持たなければなりません。

図2A 図2B

LGC社の色素は ChromaのWeb サイトにリストされているため、これら2つのグラフを重ねてスペクトル特性が互いに一致していることを確認するのは非常に簡単です!ChromaのWebサイトで、蛍光色素タブ (凡例タブの右側) をクリックし、目的の色素 (この場合はQuasar®570) を検索します。選択したら、[Reload Plot] をクリックすると、完了です。


Quasar®570は、波長548 nm に吸収極大があり、波長566 nmに蛍光極大があります。
ご覧のとおり、Chromaのこのフィルターと非常によく一致しており、吸収波長と蛍光波長が十分に分離されており、隣接するチャネルへの滲み込みを防ぎます。

はい、完了です!この記事が、Stellaris RNA FISHプローブのイメージングを成功させるために必要な顕微鏡コンポーネントについて、理解を深めるのに役立つことを願っています。このシリーズのパートIIでは、ソフトウェアを使用して
Stellarisの画像をキャプチャおよび最適化するためのヒントを説明しますので、ぜひご注目ください。

 

参考文献
1.“Quantum Efficiency.” Photometrics Research Imaging Learning Zone: CCD Camera. Web

2.“Numerical Aperture and Image Resolution.” Nikon MicroscopyU. Web

3.“Introduction to Microscope Objectives.” Nikon MicroscopyU. Web


Originally published : 2017/08/16 ※最終更新日

 

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