【Application Note】リガンド結合相互作⽤のin situ検出:コレラ菌のToxRSpタンパク質複合体の胆汁検知システム
コレラ菌(Vibrio cholerae) によって引き起こされるコレラは、1960 年代以来、世界的な健康問題として存続しており、かなりの死亡率や社会経済的影響をもたらしています。この細菌は、検知タンパク質ToxR とToxS によって促進される環境変化への迅速な適応が、その⽣存に重要な役割を果たしています。重要な環境的⼿がかりである胆汁酸は、病原性因⼦に影響を及ぼしますが、その正確なメカニズムはまだほとんど解明されていません。
本研究では、ビブリオ属の病原性とストレス応答を引き起こすことが知られている検知タンパク質複合体であるToxRS のペリプラズムドメインであるToxRSp と、胆汁酸との間のリガンド結合相互作⽤の影響を調べるためにMMS を⽤いました。
以前は、このタンパク質複合体の検知機能は主に転写因⼦ToxR に割り当てられていました。ToxS はToxR と強⼒なヘテロ⼆量体を形成することが知られており、タンパク質分解から保護することでToxR の活性を⾼めていると考えられていました。今回の研究では、X 線結晶構造解析、NMR、SEC、SEC-SAXS、およびMD シミュレーションの結果から、ToxR ではなくToxS が、ToxR との複合体の主な胆汁センサーであることが⽰唆されました。興味深いことに、ToxSは単独では胆汁センサー能を持たず、ToxR との相互依存機能により⾮常に不安定です。
本アプリケーションノートでは、MD シミュレーションによって予測された胆汁結合相互作⽤の実験的証拠を提供するために、マイクロ流体変調分光法(MMS) を使⽤したことについて説明します。さらに、胆汁-ToxRS 相互作⽤がタンパク質複合体の構造変化を引き起こすかどうか、また、提案されたポケット以外に相互作⽤部位があるかどうかを調べるためにMMS を使⽤しました。
今回発表されたデータは、コレラ菌のToxR とToxS の検知ドメインに関する知⾒を提供する⼤規模な研究の⼀部※であり、それらの相互依存性と、共構成シグナル伝達系への所属を明らかにするものです。この発⾒は、この重要な相互作⽤を阻害し、ビブリオ属のさまざまな菌株の⽣存と病原性を抑制するために有望なものです。
※Gubensäk, N. et al. Vibrio cholerae’s ToxRS bile sensing system. Elife 12, (2023).
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