siRNAの合成収量を最大化させる、より環境に配慮した手法について
核酸医薬品の適応範囲と需要は急速に成長し続けています。需要は元々希少な遺伝性疾患に限定されていましたが、現在ではオリゴヌクレオチドを基盤とした治療法は、がんや感染症など幅広い疾患に対して研究・開発が進められています。
世界市場における核酸医薬品の規模はこの先10年でおおよそ3倍に、2024年の918憶円から2034年には2706億円にまで増えると予測されます。1 核酸医薬品の急増する需要に応えるためには、大規模な製造を可能とする高効率な製造方法が必要になるでしょう。
Controlled pore glass(CPG)はオリゴヌクレオチド合成における最も一般的な手法の中核となっています。CPGは、各合成サイクルにおいて、ホスホロアミダイトが伸長する鎖に付加される際に、オリゴヌクレオチドを結合する固相担体として機能します。
CPGの製造方法とデザインは核酸合成の効率と成功に大きな影響を与えます。このブログ記事では、次世代のCPGはどのようにして合成収量の高さと環境における持続可能性を可能にするのか解説します。
Controlled pore glassとは?

CPGは平均的に直径100㎛、人間の髪ほどの大きさの微細なガラスの粒子です。メーカーは形や構造を調整することでCPGの性能を最適化できます。
一つのCPGの粒子は数千もの細孔(ポア)を持ち、それぞれのポアにはその直径たった0.05㎛の数多の分枝構造が存在します。ポアの内部でオリゴ合成が行われ、ヌクレオチド鎖を一塩基ずつ伸ばしていくのです。
ポアサイズが小さい(500-600Åほど)場合、広い表面積を持つためローディング容量が増加し、結果としてオリゴ収量が高くなります。一方で、オリゴヌクレオチド鎖が長くなるにつれて小さいポアほど塞がれやすく、合成試薬が届かず合成が不完全に終わることもあります。
合成が妨げられた場合はオリゴが切断され、末端の数塩基だけが失われることもありえます。このような不完全長の不純物を完成品から取り除くのは、分子の大きさと電荷が目的生成物の性質によく似ているため特に難しいとされています。
よってCPGを選ぶ際は、収量の最大化と切断された不純物混入のリスクを天秤にかけなければいけません。理想のポアサイズは、主に合成したいオリゴヌクレオチドの長さによって決まります。
20-25塩基対の一般的なsiRNAであれば、500Åほどの小さなポアサイズでも切断された不純物混入のリスクをさほど増やすことはありません。実際、500-600ÅのCPGは大規模な核酸医薬品の合成によく使われています。
長いオリゴヌクレオチドの合成には2000-3000Åほどの格段に大きいポアサイズが必要です。こちらの例として、CRISPRを基盤とした治療法におけるガイドRNAなどが挙げられるでしょう。大きなポアサイズは立体障害を低減し、合成試薬をオリゴヌクレオチドまで到達させやすくすることでオリゴの不完全長率を減らします。
ポリスチレンは従来のCPGに比べて収量が高いため、大規模な商業的合成に向いている固相担体として人気があります。ですが、新たなCPGの技術によって、CPGがポリスチレンにパフォーマンス面でもコスト面でも張り合える時代が幕を明けています。
PrimeMax™ siRNA CPGで完全長オリゴの収量を増やしましょう
高い効率とスケーラビリティを併せ持つ核酸医薬品製造の手法が必要であるため、LGC Biosearch Technologies™は将来的な需要に応えるべく新世代CPGの開発を行いました。
PrimeMax™ siRNA CPGは、3’ヌクレオシドをCPGに最適な密度で取り込むことで完全長オリゴの収量を増やします。CPGを過剰にローディングすると立体障害が起き、初期の合成サイクルにおいてカップリング効率が下がります。これにより、収量の低下や完全長オリゴの純度の低下がみられます。
弊社はまずAlnylam Pharmaceuticals社と協同で、PrimeMax siRNA CPGを用いてRNA干渉治療薬lumasiranのsiRNAアンチセンス鎖を合成しました。これによって証明されたのは、CPGの表面積に最適化されたローディングを行うことで合成の効率を上げ、siRNAの完全長オリゴ(Full-Length Product、FLP)収量を増やせるということです。
最新の研究ポスターでは、このような表面積正規化ローディングを使うことで、FLP収量を既存製品と比較して50%も向上できると示しました。
またPrimeMax CPGのポア直径を400Åまで小さくすることで、23塩基のsiRNAアンチセンス鎖の生成純度を保持しながらローディング容量を増やすことが可能です(図1)。高い表面積を持つガラスを用いて、完全長オリゴの収量を高めながら合成の最終段階付近で溶出する不純物を減らす最適なバランスを実現しています。

図1:完全長オリゴの純度(%FLP、青、左軸)は全てのCPGポアサイズにおいて高いままです。それに反し、FLP収量(TNFO、緑、右軸)においては<400Åポアサイズの方が大きいポアサイズより優位に高いです。
PrimeMax 400Å CPGの広い表面積は、従来のCPG収量に比較して生産性を40%高めます。大規模なオリゴヌクレオチド合成において非常に大きな向上です。
持続可能な未来に向けたNextGen製造
LGC Biosearch Technologiesは持続可能性を事業の中核に据えています。製造プロセスの合理化と製品の環境負荷低減を目指して、弊社のチームは継続的な技術開発を行っています。
PrimeMax CPGは弊社の新しいNextGen製造プロセスで生産されており、以下の利点が挙げられます:
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使用エネルギーの大幅な低減
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排水量50%減
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短い加工期間(2週間)
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生産能力200%増
この新たな製造システムは、従来の資源消費が激しいプロセスがより持続可能になるように生産基盤を整える大きな一歩です。また、製造効率の向上により、高性能な製品に対する顧客の需要に応えつつ、高い費用対効果を維持することも可能となります。
市場を先導する、高効率・持続可能なCPG
弊社は元々Prime Synthesis社として最先端のCPG製造技術を開発してきました。1980年代からCPGを製造し続けており、ヒトゲノム計画に製品を供給した実績もあります。
現在はBiosearch Technologiesとして、多くの核酸医薬品製造会社と製造受託機関を戦略的パートナーとして支援しています。弊社のCPG製品は商業的な医薬品開発にとって欠かせないものです。
弊社はISO 9001の製造基準を遵守し、お客様に安心してお使いいただける信頼性の高い製品をお届けすることを約束します。
弊社は高性能CPGの限界に挑み続けることにおいて市場を先導しています。PrimeMaxラインナップは弊社の最先端のイノベーションであり、高い表面積と最適化されたローディングによって合成の規模を最大化し、完全長オリゴの収量を高めることに成功しました。オリゴ3’末端を修飾するための多様な機能性に優れたCPGを多数提供しているため、革新的な創薬を可能とする柔軟性が高いソリューションとなっています。
PrimeMaxは現代の合成におけるニーズのためCPGを再構想しています。収量を増やすと同時に、環境的な負担を減らすことが可能です――製造者、消費者、そして地球にとって三方よしな結果となっています。
弊社はPrimeMaxの強みとして、siRNA合成において400Åの製品が生産性を40%高めることを示しました。表面積正規化ローディングの手法は他にも、別のオリゴ塩基長やモーダリティで応用可能です。お客様のご要望について、ぜひ弊社までご相談ください。
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参考文献
- Precedence Research (2025) Nucleic Acid Therapeutics Market Poised for Strong Growth Driven by RNA and Gene Therapy Advances https://www.precedenceresearch.com/nucleic-acid-therapeutics-market
